2024年8月2日 金曜日
新紙幣とタンス預金
この7月、新紙幣が発行されました。新紙幣は、千円札、五千円札、一万円札の全てが刷新され、デザインとセキュリティ機能が一新されました。
新紙幣が発行されても、これまでの旧紙幣が直ちに無効になるわけではありません。引き続き使用することができます。日本銀行では、明治18年から現在までに56種類の銀行券を発行してきました。これらのうち現在発行している種類の他、既に発行されなくなった種類を含めて現在25種類の銀行券が有効です。昔あった100円札や1円札も有効です。
もちろん、旧紙幣の流通は徐々に減少していき、いずれ使用されなくなります。2,000円札がわかりやすいですが、法的に有効でも使用されなければ流通しなくなります。使用されなくなるのは、過去の例から考えると10年程度のようです。
使用されなくなった旧紙幣は日本銀行の本支店で交換できます。手数料はかかりませんが、日本銀行の窓口は少なく、窓口がない都道府県もあります。
新紙幣の発行では「タンス預金」にも注目が集まります。日本のタンス預金の総額は数十兆円に上ると言われています。
タンス預金は特に高齢者の間でその傾向が顕著です。要因は様々あるでしょうが、日本の成長期と共に所得を得てきたこと、バブルを経験して投資にリスクを感じていること、今の預金利息が低いこと、デジタル化に追いついていないことなどがタンス預金を支持する一因となっています。
新紙幣の発行には、タンス預金をあぶり出す効果も期待されています。旧紙幣はいずれ使えなくなるので、多くの人々が銀行に旧紙幣を持ち込んで交換を行うことになるでしょう。これにより、これまで隠されていた大量の現金が表に出てくる可能性が高まります。
相続税対策でタンス預金をしている人もいます。具体的には、現金を自宅に保管しておいて、相続財産として申告しない、もしくは少額に見せかけるという手法です。もちろんこれは脱税になるので、税務署に見つかれば厳しい罰則が科されます。
税務署には預金口座の調査権限があり、相続税の調査の際には被相続人やその家族の預金口座の動きを過去に遡ってチェックします(過去10年程度)。銀行は税務署から預金口座の問合せがあれば他の業務を差し置いて回答するそうです。なので、タンス預金として現金を引き出していた場合でも、その引き出しの記録から隠し財産が発覚する可能性はあります。
良からぬことを考える依頼者がいると、困るのは税理士や我々司法書士です。いずれも銀行の調査権限もないし、依頼者の家のタンスを調べるわけにもいきません。嘘をつき通してくれればいいかもしれませんが、中途半端に打ち明けられるとしばらく悩むことになります。
この新紙幣の発行を契機に、現金の管理や相続について見直す機会となればいいですね。また、新紙幣への切り替えを通じて、透明性の高い金融環境が実現することを期待しています。
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