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2025年5月8日 木曜日

登記の完了まで1か月以上かかる現状について

久しぶりに司法書士会の総会に出席した。司法書士として登録してから、気がつけば19年が経っていた。そのせいか、会場には知らない顔が増え、年長の方々の姿は少なくなっていた。少し寂しい気もするが、若い世代が会の中心で活躍している様子を見るのは、頼もしいことでもある。

さて、総会の質疑応答では、登記の処理の遅れについて、いくつかの意見が出された。

「1ヶ月以上かかるのはおかしい」「法務局にもっと改善を求めるべきだ」

こうした声が上がるのも無理はないと思う。かつては、申請から完了まで1週間程度、早ければ翌日に完了することもあった。それが今では、1ヶ月以上かかることも珍しくない。

私がこの仕事を始めた頃は、すべて書面での申請だった。法務局の窓口に書類を持参し、完了後もまた窓口に足を運んで受け取っていた。その当時は、登記の申請から完了までは2週間程度だった。その後オンライン申請が進み、書類のやりとりも郵送が主になり、登記はより迅速で効率的なものになっていった。だからこそ、いまのように時間がかかる状況に対して、違和感を持つ気持ちはよくわかる。

一方で、現状についての説明もあった。登記の処理が遅れている背景には、法務局職員の人手不足と働き方改革の影響があるという。
申請件数そのものが大幅に増えたわけではなく、相続登記の義務化による影響についても、登記の増加率は107%にとどまっており、それが直接の原因ではないという説明があった。人手不足も働き方改革も、どちらも時代の流れの中で起きていることで、今後もすぐに解消するものではなさそうだ。

だからこそ、登記の現場で働く私たちにも、できる工夫があるかもしれない。たとえば、案件ごとに緊急度を見極めて、急ぎのものは事前に相談し、余裕のあるものは無理のないスケジュールで進める。
依頼者にも、現在の状況を丁寧に説明することが大切になってくると思う。久しぶりに総会に出席し、昔との違いをいろいろと感じた。

登記制度も、社会全体の働き方も変わってきている。そんな中で、今の状況を受け入れつつ、自分にできる対応を考えていくことが、これからの実務に求められていくのかもしれない。

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2025年4月16日 水曜日

不動産の名義変更を予定されているお客様へ ~読み仮名・生年月日・メールアドレスのご提供について~

このたび法務省の制度改正により、2025年4月21日以降に不動産の名義変更(所有権移転登記)を申請される方については、従来の「氏名・住所」に加えて、「氏名の読み仮名」「生年月日」「メールアドレス」のご提供が必要となりました。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00678.html

 これは、2026年4月から始まる新制度に向けた準備です。今後、法務局が住民票の情報をもとに、引っ越し後の住所変更を自動で反映できるようになるため、あらかじめ「検索用情報」としてこれらの情報を登録しておく必要があります。

■ ご提供いただく情報

・氏名(+読み仮名)

・現住所

・生年月日

・メールアドレス(ご本人のもの)

 この制度により、たとえば将来ご本人が住所変更の登記をし忘れてしまった場合でも、法務局が職権で情報を確認し、登記簿の住所を正しく更新できるようになります。その結果、不動産の手続きが滞りなく進み、相続や売却時のトラブル防止にもつながります。

 

■ メールアドレスをお持ちでない方へ

 ご本人様がメールアドレスをお持ちでない場合でも、登記申請は可能です。

 ただしその場合、住所変更などの確認を法務局が行う際に、メールでの連絡ができませんので、必要な確認や通知が郵送等で行われることになります。

 可能であれば、スマートフォンやパソコンで使用できるメールアドレスをご用意いただくことをおすすめいたしますが、難しい場合はその旨をお申し出ください。状況に応じて柔軟に対応いたします。

 制度の内容や手続きの流れについてご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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2025年4月2日 水曜日

50歳で転職サイトに登録して気づいた、司法書士としての働き方と業界の限界

先月、ふと思い立って転職サイトに登録してみた。

転職を本気で考えているわけではない。ただ、自分の市場価値がどの程度なのか、そして現在の労働市場がどのように変化しているのかを知りたくなったのだ。私が就職活動をしていた頃と比べ、世の中は大きく変わっている。それを実感したかった。

実際に登録してみると、驚くほどのスピードで多くのオファーが届いた。50歳という年齢を考えれば、これは想定外だった。中には年収にして1,000万円を超える求人もあった。思わず「本当に?」と目を疑った。

この変化を実感するたびに、私は考えてしまう。

経営者でいることは、果たして今も自由なのか?

私が独立したのは15年前。「自由な働き方」を求めての決断だった。確かに、時間の使い方や仕事の選び方は自分次第だ。しかし最近では、コンプライアンスや社会的責任、風評リスクなど、かつて想定していなかったプレッシャーが増えている。そんな中、会社員として柔軟に働き、安定した収入を得ている妻の姿を見ると、「今の時代、自由なのはむしろ従業員では?」という逆説的な問いが浮かんでくる。

届いたオファーの中には、司法書士事務所や司法書士専門の転職エージェントからのものもあった。だが、提示された条件は芳しくない。エージェントに聞けば、業界全体で賃金を上げるのは難しいという。理由は明確だ。司法書士業界は、新たなサービスを生み出せていないからだ。

もちろん、業務範囲はここ数年で広がっている。弁護士が行っていた業務の一部も担えるようになった。しかし、それはあくまで“分担”であり、“進化”ではない。依頼件数が増えても、提供する価値が変わらなければ、価格に反映させることはできない。ましてや、今の若い人たちにとって、低賃金・長時間労働の業界に魅力を感じるはずもない。

一方で、他の業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、働き方もどんどん改善されている。人材難の中、中小企業でさえ賃金引き上げに取り組んでいる。そうした流れを横目に見ていると、司法書士業界がこのままでいいはずがない、と思わずにいられない。

業界の魅力を維持し、持続的に発展させるにはどうすればよいか。私はこう考える。

「新しいサービスを創ること」——それに尽きる。

AIやRPAの導入、オンライン相談の普及、他士業との連携によるワンストップ・サービスの提供。可能性はいくらでもある。ただ、現場がその一歩を踏み出すことを恐れていては、変革は起こらない。

司法書士という資格の価値を守るためにも、今こそ業界は変わるべきときだ。私は、そう強く感じている。

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2025年3月2日 日曜日

メアドに振り仮名?

このコラムで何度か書いているが、日本では「所有者不明土地問題」が深刻化している。登記名義人の死亡後、相続登記がなされないまま長期間放置された結果、実質的な所有者が分からなくなる土地が全国に増加し、その面積は九州本島の約半分とも言われる。背景には、相続登記が義務化されていなかったこと、そして登記システムに「名寄せ」の機能がないことがある。

こうした状況を改善するため、不動産登記制度の新たな改正が行われた。改正の要点は二つある。

第1に、海外に住所がある日本人が日本国内の不動産の登記名義人となる場合、日本国内の連絡先を登記申請情報として提供することが必要となった。これにより権利移転の際に連絡不能となるリスクを軽減できる。

第2に、登記申請時に検索性向上のための情報として、(1)氏名、(2)氏名の振り仮名、(3)住所、(4)生年月日、(5)メールアドレス、の提出が求められるようになった。生年月日やメールアドレスを集約し、将来的に同一人物の所有不動産をより正確に把握できる名寄せ機能に活かそうという狙いがある。

しかし、この改正には思わぬ波紋が広がった。特に問題視されたのが「メールアドレスに振り仮名を付ける」というルールである。実務の現場では、司法書士たちが強く反発した。理由は単純で、「意味のない手間が増えるだけ」だからだ。現代の司法書士が手書きで登記申請書を作成することは皆無で、Wordなどのソフトを使い、オンラインで申請するのが常識である。そんな中で、メールアドレスにまで振り仮名を付ける必要性を感じる実務家は皆無だった。

正直なところ、「taro.kono@gmail.com」を「タロー ドット コウノ アット マーク ジーメール ドット コム」と打ち込む姿を想像すると、苦笑いがこぼれる。もはや登記というより暗号解読の世界だ。

この混乱に拍車をかけたのが、元デジタル大臣・河野太郎氏のSNSでの一言だった。彼は「法務省、メールアドレスに振り仮名っていったい・・・」と投稿。たったこれだけのコメントが瞬く間に拡散し、司法書士たちの怒りと共感を一気に引き寄せた。河野氏の発言は、意味のない作業にリソースを割く法務省への皮肉であり、まさに現場のモヤモヤを代弁した形である。

結果として、当初の規定は修正され、「手書きの申請に限り振り仮名が必要」との結論に落ち着いた。現代の実務で手書きの申請がほとんど存在しないことを考えれば、この修正は「誰も傷つかない」落としどころとなった。

今回の改正は、所有者不明土地問題の解決を目指した重要な一歩であることに間違いはない。しかし、その裏側では、官僚的な形式主義と現場の合理性が衝突し、SNS世論がそれを一気に拡散するという、現代日本らしい風景が広がっていた。日本の登記制度はまだまだ進化の途中である。

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2025年1月31日 金曜日

伝わる言葉の距離感

先日、息子の登園の際に、息子の手袋がないので、妻にLINEで問い合わせると「ゴメン、私のカバンに入ったまま」という返信があった。その夜、入浴中にそのことを思い出し、浴室から妻に「手袋!」と言った。妻はその一言で息子の手袋のことだとわかり「わかった」と返事があった。

日常の会話はこのように、一言で終わる会話が多い。言葉に詰まって「えっーとあのー」と言っていても、妻が「○○のこと?」と正解を返してくれることもある。子供の頃、家の茶の間でキョロキョロしているだけで母親が欲しいものを出してきたこと、あの感覚に似ている。それは、家族や仲間の間で、過去から現在にわたって共有された情報があるからこそ成立する。共有された時間が多ければ多いほど、コミュニケーションは非言語化し、短縮されていく。

これとは真逆の世界にあるのが、司法書士の日常である。我々が扱う法律文書が求めるのは「具体性」「網羅性」「明確性」である。家族間の会話で「手袋!」という一言が通じるのは、相手が過去の状況や関係性を前提に推測してくれるからだが、法律文書ではその「推測」というプロセスを完全に排除しなければならない。書面だけで、当事者間や第三者が正確に内容を理解できることが求められる。

例えば、登記申請における「不明確な記載」と「明確な記載」を比較してみると、その違いは一目瞭然だ。

●不明確な記載:「申請者が不動産を購入したため、所有権移転登記を行う。」

 これでは「誰が」「どの不動産を」「どのような売買契約に基づいて」購入したのかがわからない。

○明確な記載:「申請者(○○太郎)は、2025年1月1日に、○○市○丁目○番地の土地(地番○○)について、売主(△△花子)との間で売買契約を締結し、所有権を取得した。このため、所有権移転登記を申請する。」

 これは、誰が、どの土地を、いつ、どんな契約をもとに購入したかが、具体的に記載されている。

このように法律文書では、情報をできる限り詳細に、かつ網羅的に記述することで、第三者でも内容を正確に理解できるようにする。情報の過不足が生じると、解釈の余地が生まれ、トラブルにつながるからだ。

日常生活でも行き違いやトラブルを防ぐには、この「具体性」「網羅性」「明確性」の考え方が役に立つ。例えば、子供の送り迎えについて、「明日の送りお願いね」と言ったとき、子供が2人いれば誰を何時に送るのか迷うこともあるだろう。この会話は「(わたしは)明日の(朝8時に)(息子の)(保育園の)送りを(あなたに)お願いね」であり、カッコの中が抜けている。法律文書のように完璧を求める必要はないが、日常会話もカッコの中を意識して適宜加除することでトラブルは減らせるだろう。

法律文書と日常会話は、極端に異なる世界のようでありながら、実は「誤解を防ぐ」という点で共通の目標を持っている。日常生活に法律文書のような正確さを少し取り入れるだけで、身近なコミュニケーションはもっとスムーズになるはずだ。

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2024年11月18日 月曜日

兵庫県知事選とロスジェネ世代の未来-地方から始まる自律共生の時代

2024年11月、兵庫県知事選挙で再選を果たした斎藤元彦氏。
この結果は、単なる地方自治の一幕にとどまらず、日本全体の政治構造に潜む変革の兆しを示すものだ。

斎藤氏は、既得権益と戦う「改革者」としてのイメージをSNSを通じて広く浸透させた。
特に、これまで政治に無関心とされてきた若年層の支持を得たことが、彼の勝利を支えた。
団塊世代が徐々に影響力を失い、ロスジェネ世代が次の人口ボリュームゾーンとなる今、この知事選は自律分散型社会への移行を象徴する出来事と言えるだろう。

オムロンが提唱するSINIC理論によれば、科学技術と社会は相互作用しながら進化し、今後は「自律共生社会」へと向かうとされている。
今回の知事選挙では、SNSやAIを活用した戦略が中心となり、中央集権的なマスメディアの情報支配を超える形で、地方からの声が政治に反映された。
斎藤氏に関するパワハラ疑惑や批判的報道が広がる一方で、県民の多くがその「改革者」としての姿勢を評価し、既存の権威や中央の論調に反発したのは、デジタル技術が生んだ新たな政治参加の形だといえる。

さらに、これからの10年間で団塊世代の減少が進む中、日本社会はロスジェネ世代に大きな注目を集めるだろう。
この世代は、就職氷河期という過酷な環境の中で社会に出た。
非正規雇用や低賃金を強いられた背景を持つ一方、競争社会や自己責任論を内面化している特徴がある。
既存の枠組みから外れた経験が、彼らの社会観や価値観に強く影響を与えている。
こうしたロスジェネ世代が、次の人口ボリュームゾーンとして社会を動かす力を持つようになるのは必然だ。

この世代が直面するのは、親世代の介護や自身の老後資金不足といった現実的な課題である。
その中で、労働市場での多様な働き方を模索し、フリーランスや起業、地方移住といった新たな選択肢を選ぶ人が増えるだろう。
同時に、デジタル技術を活用した新しい共助モデルを構築し、地域やオンラインコミュニティを基盤にした共生の仕組みを生み出していく可能性がある。
彼らは「見捨てられた世代」であるとの意識から、格差是正や社会的包摂を目指す活動に積極的に関わるだろう。

今回の兵庫県知事選で見られたように、中央集権的な構造から地方の自律的な判断へと重心が移りつつある現象は、SINIC理論が示唆する「自律共生社会」の到来を強く示している。
これは単なる地方自治の範囲を超えた、大きな社会変化の始まりだと言える。
デジタル技術の進展が情報の流れを分散化し、多様な声が社会を動かす時代。団塊世代が築いた中央集権的な社会構造に代わり、ロスジェネ世代が推進する自律分散型社会が、今後の10年で日本全体に広がる可能性を秘めている。

これからの日本社会は、地方や個人が主体となり、自らの意思で変化を起こしていく「自律共生」の時代を迎える。兵庫県での静かな革命は、その序章に過ぎない。
この動きが地方から全国へと広がり、新しい社会構造を築くきっかけとなることを期待したい。
団塊世代からロスジェネ世代へのバトンタッチは、日本社会に新たな変革をもたらす第一歩と言えるだろう。

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2024年10月30日 水曜日

代表者の住所が非表示に

この10月、商業登記規則が改正され、商業登記簿における代表取締役などの住所を非表示にすることが可能になりました。この改正は、プライバシー保護を強化するための重要なものであり、特にインターネット上で容易にアクセスできる現代の情報環境に対応したものです。ここでは、この改正の意義、メリット、デメリットについて解説いたします。

まず、商業登記簿とは法人の基本情報を一般に公開するもので、その目的は企業活動の透明性と取引の安全性を確保することにあります。法人の名称、所在地、目的、代表者の氏名、住所が公開されることで、取引の相手方や一般の利害関係者が法人の実態を把握しやすくなり、信頼性が担保されてきました。これにより、取引先が詐欺的な行為を行う架空の法人や、不正を働く可能性のある法人を避ける手段となり、また債権者が代表者に対する法的措置をとるための情報としても機能してきました。

一方で、代表者の住所が公開されることによる問題もありました。特に近年は、個人情報漏洩やストーカー行為、さらにはネット上での誹謗中傷など、代表者個人に対するリスクが高まっています。企業の代表者という立場は、場合によっては強い批判や攻撃の対象となり、住所が公にされることで家庭や個人の安全が脅かされる可能性があるのです。

こうした背景から、今回の改正では個人のプライバシーを保護するために代表者の住所を商業登記簿で非表示にする措置が導入されました。この改正は、企業活動における代表者個人の安全を確保しつつ、従来の商業登記の意義を一定程度維持するためのバランスを図ったものといえます。

改正のメリットは主に二つあります。第一に、代表者個人のプライバシーが保護される点です。現代では個人情報が容易に拡散され悪用されるリスクが高まっており、住所が公開されることで代表者がストーカーやネット上の嫌がらせにさらされる危険性は否定できません。この改正は、こうしたリスクを大幅に低減させます。

第二のメリットは、企業が柔軟に代表者を選任できるようになる点です。住所が公開されることに不安を感じて代表者就任を拒んでいた人も、今後はそのような懸念が減り、企業はより適任な人物を登用する余地が広がります。

しかし、デメリットや懸念もあります。最大の懸念は、透明性の低下による取引の信頼性の損失です。代表者の住所が非公開になることで法人の実態を把握する手がかりが一つ減り、特に新規取引先や信用調査を行う第三者が不安を抱く可能性があります。商業登記簿は取引相手の信頼性を確認するための重要な手段であり、代表者の所在が明確でないことは取引のリスクを高める要因となりかねません。

また、債権者保護の観点からも、住所が非表示になることで代表者に対する法的請求が複雑化し、債権回収が困難になることが懸念されます。特に代表者が逃亡した場合、住所が特定できないことは大きな問題となり得ます。

代表取締役などの住所非表示措置は、代表者個人の安全とプライバシーを保護するために重要な意義を持つものですが、取引の信頼性や債権者保護の観点から新たな課題も生じています。今後の法改正や運用の中で、これらの課題に対する適切な対策が求められるでしょう。

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2024年9月22日 日曜日

地面師たち

今、Netflixでドラマ「地面師たち」が放映され、話題となっている。

このドラマの元ネタは、2017年6月に積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られ、逮捕者15人を出した事件。いわくつきの物件にも関わらず、大手メーカーが巧妙に騙された。

地面師とは、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る詐欺師、もしくは詐欺事件そのもののこと。そして、不動産取引の現場で地面師詐欺を防ぐのが司法書士の役割。
不動産取引の最終場面、買主が売主に売買代金を支払う現場に司法書士は必ず立会う。

売主、買主の本人確認と意思の確認をして、権利証や印鑑証明書を確認し、万事揃ったところで代金決済にGOを出すのが司法書士。
本人確認では、運転免許証やマイナンバーカードで本人の情報を得て、氏名、住所、生年月日などを口頭で確認する。
そして、本人しか知らないであろう情報、例えば、その土地はいつ、誰から、いくらで買ったか、転居を繰り返していれば住所の履歴を聞くなど、登記簿や住民票と照らし合わせて情報を聞き取っていく。
多少余談を交えて、資料と話の辻褄が合えば本人であると判断する。

ただドラマのように、背景まで作りあげられたり、立場上逃げ場が無くなったり、報酬をニンジンのようにぶら下げられたりすると、正しい判断ができなくなることも起こり得る。非常に怖い世界である。

私は地面師に遭遇したことはないが、若い頃に緊迫した場面に遭遇したことがある。

独立前、弁護士事務所に勤めている頃、歌舞伎町の中心にあるラブホテルの取引に関わった。
僕の勤めていた弁護士事務所はホテルのオーナーの代理人をしていた。
ホテルのオーナーは経営の立て直しのためにホテルを売らざるを得なかった。

歌舞伎町という街の特性からわかるだろうが、この取引に群がる人たちは筋の良い人たちではなかった。また外国籍も多い。金の匂いに多くの業者が群がって来た。

関係者は、買主、買主の転売先、転売先の金主、仲介業者、売主、売主の債権者、などなど。売買代金決済の日、取引をする部屋には20人以上が集まった。

通常、売買代金決済というのは万事整ったところで行われるが、その日、転売先の金主が来ていなかった。どうも買主と転売先でまだ金の話がついていなかったようだ。

買主が慌てながら時間稼ぎをしていたが、30分も経ったところで私のボス(弁護士)が買主以外の関係者を「出ていきなさい!」と言って部屋から追い出してしまった。
当然、この決済を担当する司法書士も追い出された。当時自分がその司法書士の立場だったら手汗脇汗が止まらなかっただろう。

滅多にない話ではあるが、暗い路地に迷い込むと何があるかわからない世界にいることは間違いない。

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2024年9月2日 月曜日

東京家裁、戸籍謄本等の提出はコピー可に

家庭裁判所で相続放棄をする際、戸籍謄本等を提出する必要があります。
最近、この戸籍謄本等をコピーでも可とする裁判所が増えてきましたが、東京家庭裁判所も令和6年9月1日からコピー可となりました。

先ほど電話で確認したところ、発行からの有効期限は3か月以内とのことですが、提出する証明書の種類によって異なる可能性もありますので、事前に家庭裁判所にご確認ください。

https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/kosekiteisyutu/index.html?fbclid=IwY2xjawFCACFleHRuA2FlbQIxMAABHcA2DMgksjWt1Ra_jRSwnb-bpcjvFvcukKwm0SlxpACwnhzdxinG74Vfdg_aem_iLQB8_zWqU7AWklUSBT2pw

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2024年8月30日 金曜日

他人は鏡

子供が生まれると、家庭の風景は一変する。
それまでの夫婦間の関係が変わり、日常生活に新たな役割や責任が加わることで、口論や喧嘩が増えることは珍しくない。

私自身、子供が生まれるまでは、夫婦間での口論はほとんどなかった。結婚式の準備中に一度大きな喧嘩をした程度である。
しかし、子供が生まれ、家庭の中での役割が増えるにつれ、家事育児の分担について話し合わなければならない場面が増えた。

特に、共働きの家庭では、家事や育児の分担を夫婦間でしっかりと話し合う必要がある。
しかし、それぞれ生活ペースが違うから、意見の食い違いやストレスが生じることがしばしばある。
ストレスが蓄積すると、些細なことであっても口論が起こりやすく、時には激しい言葉をぶつけ合うこともある。

子供が2人になり、下の子が2歳ぐらいになると子供同士の喧嘩が始まる。
おもちゃの取り合いに始まり、叩き合いになってどちらかが泣く。
子供の喧嘩を止めるために親が入って叱る、という日々の連続。

子供が小学生になると、やることが格段と増える。
学校の準備をしたかどうか、宿題をしたかどうかなどで、親と子供の口論も増える。
家庭内は毎日戦争状態、ストレスが溜まる日々が続く。

ある日、娘が小学校から帰ってきて、ランドセルや手提げ袋を散らかしたまま遊んでいるのでイラっとして思わず叱った。
そうすると、娘が睨んだ目で反論してきた。その目と言い草が自分そっくり。
その時「しまった」と後悔した。

さらに先日、娘と妻の口論を聞いていると、娘の姿は見事に親のコピーだった。
「子は親の鏡」とはよく言ったもの。夫婦や親子で喧嘩が起きるほど、未来の自分を苦しめると思うと背筋が寒くなった。

仕事でも似た話はある。
揉め事の当事者の言い分を聞いていると「あいつは金目当てなんですよ」と相手を批判する人がいるが、そういう人ほどお金に執着していることが多い。
他人は鏡、他人に不満を感じたらそれは自分自身だと思った方がいい。

イタリアの教育者マリア・モンテッソーリは「大人と子どもの戦い」をやめることが平和への一歩となると説いた。
周囲に不満を感じることは日々あるが、「他人は鏡」であるという視点で自分自身を見つめ直し、自分の行動を改めることで、自分から平和が始まっていくのではないだろうか。

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