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2026年10月17日 土曜日
「何のためにやっているか」を問い直す。本人確認に本当に必要なこととは。
先日、SNSでクリプト(暗号資産)業界における本人確認、いわゆるKYCについての投稿を目にした。銀行や証券会社、暗号資産の取引所など、財産を扱うサービスを利用するときに、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を提出することは、いまではすっかり当たり前になっているが、その投稿が問題にしていたのは、本人確認を厳格にするために多くの個人情報を集めれば、それだけ事業者が管理しなければならない情報も増え、万一ハッキングなどによってそれが奪われた場合には、本人確認のために集めた情報そのものが新たなリスクになるのではないか、ということだった。
なるほどと思った。本人確認の目的は、その人が本当に本人であることを確認することであって、身分証明書のコピーを集めること自体ではない。それならば、必要以上の個人情報を事業者が持つのではなく、「この人について必要な本人確認が済んでいる」という事実だけを確認できる仕組みがあれば、その方が合理的なのかもしれない。
そこで、ふと自分たち司法書士の仕事を振り返った。司法書士にとっても本人確認は非常に重要であり、不動産登記や会社登記などの手続では、目の前の人が本当に本人なのか、そして本人の意思による手続なのかを確認する必要がある。そのために身分証明書を確認し、その写しを記録として保存することも日常的に行っているが、本来の目的はあくまで本人を確認することであって、コピーを一枚保存することではない。
もちろん、だからといって現在の方法が間違っているという話ではない。ルールを定め、記録を残し、一定の手順に従って仕事をすることには大きな意味があり、人間の記憶や注意力だけに頼るより、仕組みを作った方が事故を防げることも多い。ただ、制度やルールが整えば整うほど、「何のためにやっているのか」よりも、「決められたことをやったか」という確認の方が前に出てくることがある。
これは本人確認に限った話ではなく、コンプライアンス全般にも言えることだと思う。チェックリストをすべて埋めたから大丈夫、マニュアルに書かれた通りに処理したから問題ない、という状態になったとき、本来何を守るためのルールだったのか、あるいはそのルールによって新しく生まれているリスクはないのか、という問いが抜け落ちてしまうことがある。
仕事を続けていると、最初は目的を達成するために作った手段が、いつの間にかそれ自体を守ることが目的になっていることがある。だからこそ、ときどき「これは何のためにやっているのか」と問い直す必要があるのだと思う。
今回は、まったく別のクリプト業界の議論を目にしたことで、自分たちの業界では当たり前になっていることを少し違う角度から見ることができた。外の世界を見ることには、こういう効用もあるのだと思う。
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