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司法書士飯田ブログ

2025年1月31日 金曜日

伝わる言葉の距離感

先日、息子の登園の際に、息子の手袋がないので、妻にLINEで問い合わせると「ゴメン、私のカバンに入ったまま」という返信があった。その夜、入浴中にそのことを思い出し、浴室から妻に「手袋!」と言った。妻はその一言で息子の手袋のことだとわかり「わかった」と返事があった。

日常の会話はこのように、一言で終わる会話が多い。言葉に詰まって「えっーとあのー」と言っていても、妻が「○○のこと?」と正解を返してくれることもある。子供の頃、家の茶の間でキョロキョロしているだけで母親が欲しいものを出してきたこと、あの感覚に似ている。それは、家族や仲間の間で、過去から現在にわたって共有された情報があるからこそ成立する。共有された時間が多ければ多いほど、コミュニケーションは非言語化し、短縮されていく。

これとは真逆の世界にあるのが、司法書士の日常である。我々が扱う法律文書が求めるのは「具体性」「網羅性」「明確性」である。家族間の会話で「手袋!」という一言が通じるのは、相手が過去の状況や関係性を前提に推測してくれるからだが、法律文書ではその「推測」というプロセスを完全に排除しなければならない。書面だけで、当事者間や第三者が正確に内容を理解できることが求められる。

例えば、登記申請における「不明確な記載」と「明確な記載」を比較してみると、その違いは一目瞭然だ。

●不明確な記載:「申請者が不動産を購入したため、所有権移転登記を行う。」

 これでは「誰が」「どの不動産を」「どのような売買契約に基づいて」購入したのかがわからない。

○明確な記載:「申請者(○○太郎)は、2025年1月1日に、○○市○丁目○番地の土地(地番○○)について、売主(△△花子)との間で売買契約を締結し、所有権を取得した。このため、所有権移転登記を申請する。」

 これは、誰が、どの土地を、いつ、どんな契約をもとに購入したかが、具体的に記載されている。

このように法律文書では、情報をできる限り詳細に、かつ網羅的に記述することで、第三者でも内容を正確に理解できるようにする。情報の過不足が生じると、解釈の余地が生まれ、トラブルにつながるからだ。

日常生活でも行き違いやトラブルを防ぐには、この「具体性」「網羅性」「明確性」の考え方が役に立つ。例えば、子供の送り迎えについて、「明日の送りお願いね」と言ったとき、子供が2人いれば誰を何時に送るのか迷うこともあるだろう。この会話は「(わたしは)明日の(朝8時に)(息子の)(保育園の)送りを(あなたに)お願いね」であり、カッコの中が抜けている。法律文書のように完璧を求める必要はないが、日常会話もカッコの中を意識して適宜加除することでトラブルは減らせるだろう。

法律文書と日常会話は、極端に異なる世界のようでありながら、実は「誤解を防ぐ」という点で共通の目標を持っている。日常生活に法律文書のような正確さを少し取り入れるだけで、身近なコミュニケーションはもっとスムーズになるはずだ。

投稿者 リーガルオフィス白金 | 記事URL