2025年6月1日 日曜日
誰かの声を借りるということ ~親子の距離感に映る、言葉の伝え方の工夫~
先日、代々木公園で娘の自転車練習に付き合った。7歳になる娘が、初めて補助輪なしに挑戦したのである。
実は冬の頃から「練習したい」と言っていたのだが、ようやく暖かくなって実行に移せた。娘は「学校で一輪車が少し乗れるから大丈夫」と自信満々だった。だが、いざ乗ってみると、そう簡単にはいかない。
私は娘の自転車の後ろを押さえながら、「ペダル漕いで」とか、「もう少し体をまっすぐに」といった声をかけていた。しかし、全然うまくいかない。私も疲れてきたので、休憩中にYouTubeで「自転車の教え方」を検索してみた。
そこに出てきた方法は、私のやり方とはまったく違った。私のアドバイスは「上から目線」の指示命令であり、YouTubeのそれは「コツの共有」に近い。そこで、私はそれ以降、「こうするといいらしいよ」と、YouTubeの“誰か”の声を借りて伝えるようにした。すると、娘も素直に聞いてくれるようになり、何より私自身がラクになった。おかげで、親子ともども長時間、気持ちよく練習に取り組めた。
これは私の趣味である占いにも通じる話だ。たまに友人を鑑定することがあるのだが、「占いではこう出ているよ」と伝えると、不思議なほどすんなり受け入れてもらえる。逆に、まったく同じことを「私の意見」として言うと、反発されることもある。
思えば、私が実家にいたころ、母親がよくぼやいていた。「お父さんは私の言うことは聞かないのに、飲み屋で聞いた話は素直に聞く」と。
家族や身近な人の言葉ほど、なぜか素直に受け取れないことがある。親から子への忠告、子から親への新しい提案。どちらも、距離が近すぎるからこそ摩擦が生まれるのかもしれない。これと似た構図は、相続対策や事業承継の現場でも頻繁に見られる。
「親に何度も言ってるんですが、聞いてくれなくて……」
「息子がうるさくて、最近のやり方ばかり押し付けてくる」
そういった悩みを、司法書士としてよく聞く。きっと誰しも、近しい人の声を一番疑ってしまう生き物なのだろう。だからこそ、外の誰かの声を借りることが、時に大きな突破口になる。
私もその「誰か」の一人になれたらと思う。それが司法書士の役割のひとつでもあるだろう。
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