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2026年3月19日 木曜日

家族とは何か──安心のインフラという視点

家族とは何か、と問われたとき、少し前の自分であれば、うまく答えられなかったと思う。愛情とか絆とか、そういう言葉は思い浮かぶが、どこか現実と噛み合っていない感覚があった。

むしろ、強く残っているのは怒りのほうである。なぜこんなにも分かり合えないのか、なぜ同じ空間にいてこんなに摩擦が生まれるのか。仕事では冷静に処理できることが、家庭ではまるで通用しない。その不合理さに、苛立ちのようなものを感じていた。

司法書士として、これまで多くの家族を見てきた。相続の場面では、長年連絡を取っていなかった親族が現れ、財産を巡って対立する。成年後見では、本人の意思を巡って家族同士が鋭く衝突する。外から見れば「なぜそこまで」と思うような場面でも、当事者にとっては切実であり、譲れない。

当初は、それを「人間関係の問題」や「性格の問題」として捉えていた。しかし、同じような構図が何度も繰り返されるのを見ているうちに、少し違うのではないかと思うようになった。何か、もう少し構造的なものがあるのではないかと。

あるとき、ふと気づいたのは、「安心」という視点である。

人は、自分が不利な扱いを受けるのではないか、排除されるのではないか、正当に評価されないのではないか、そうした不安を抱えたときに強く主張し始める。場合によっては攻撃的になる。それは、相手を打ち負かしたいからというより、自分の立場を守ろうとする反応に近い。

そう考えると、これまで見てきた多くの争いも、単なる利害対立ではなく、「安心の不足」が引き起こしている現象のように見えてくる。家族の中で安心が十分に供給されていないとき、人はその不足を埋めようとして、結果的に奪い合う構造に入る。

ここで少し視点を変えると、家族とは何かが見えてくる。家族とは、愛情の共同体というよりも、「安心を供給するインフラ」としての側面を持っているのではないか。

社会は不確実であり、競争や評価にさらされる場である。その中で、人はどこかに無条件に受け入れられる場所を求める。本来、家族はその役割を担うはずだった。しかし現実には、その家族の内部でも同じように不安が生じ、安心が揺らぐことがある。そのとき、家庭は安らぎの場ではなく、圧力のかかる場へと変わる。

興味深いのは、法律はこの状況に対して一定の整理を与えるが、解決まではしないという点である。相続分の規定や後見制度は、最低限の公平を担保する。しかしそれはあくまで外側からの調整であって、家族の内部に安心を生み出すものではない。むしろ制度が必要になる時点で、すでに何かが崩れているとも言える。

ではどうすればよいのか。この問いに対して、明確な答えを持っているわけではない。ただ、自分の中で変わったことはある。

以前は、相手の言動の正しさや誤りに意識が向いていた。しかし今は、その背後にある不安のほうを見るようになった。そうすると、不思議なもので、あれほど強かった怒りが、少しずつ力を失っていく。完全に消えるわけではないが、少なくとも同じ強さでは持続しない。

家族とは何か。この問いに対する答えは一つではない。ただ少なくとも、うまく機能している家族においては、人は過剰に防御的にも攻撃的にもならない。そして、そうでないとき、その背後には安心の不足がある可能性が高い。

結局のところ、家族をどう定義するかよりも、その中で何が供給されているのかを見るほうが現実に近いのかもしれない。安心があるのか、それとも不足しているのか。その一点だけでも、見え方は大きく変わる。

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2026年3月13日 金曜日

成年後見制度の抜本的見直しと今後の展望

成年後見制度の見直しに関する改正要綱案が発表された。今回の改正要綱案は単なる条文の修正ではなく、制度の考え方そのものを組み替えようとする内容を含んでいる点に特徴がある。

現行制度は、後見・保佐・補助という三つの類型を設け、判断能力の程度に応じてあらかじめ枠組みを振り分ける構造をとっているが、改正案はこの三類型を見直し、「補助」を基本の形として、その中で必要な権限を個別に付ける仕組みに再編する方向を示している。

つまり、これまでのように「能力がどの段階か」で制度を決めるのではなく、「その人にどんな支援が必要か」で内容を決める発想へ転換しようとしているのである。補助開始にあたり、原則として本人の同意を求めるとする点もこの思想を端的に表しており、制度の入口から本人意思を中心に据えようとしている姿勢がうかがえる。

補助人の権限も、必要な行為に限って同意権や代理権を付与する設計とされており、従来のように包括的に権限を与えるのではなく、できる限り限定的に、具体的に決めていく方向が示されている。

もっとも、判断能力を欠く常況にある者については、「特定補助人を付する旨の処分」という形で、より強い保護を可能にする枠組みも用意され、不利益な契約の取消し、郵便物の管理、さらには死亡後の一定の事務についても明文化が図られている。

実務上あいまいであった部分を整理し、保護の実効性を確保しようとする意図が読み取れる。

また、任意後見制度についても、公正証書による契約や変更の明確化、開始時の監督人選任の原則化、開始後の解除要件の整理など、安全性と透明性を高める提案が盛り込まれている。

本人の自己決定を尊重しつつも、濫用を防ぐ仕組みを強めるというバランスをとろうとしていることが伺える。

全体として本改正案は、「守るために制限する制度」から「尊重しながら支える制度」への移行を志向するものであり、成年後見制度を、能力を奪う仕組みではなく、生活を支える法的インフラとして再構築しようとする試みであるといえる。

もっとも、権限を個別に設計するということは、その設計を担う側の責任がより重くなることも意味するのであり、形式的な類型判断ではなく、本人の生活実態や意思を丁寧に把握する力量がこれまで以上に問われることになるだろう。

制度が柔軟になるほど、運用する人間の姿勢が制度の質を左右するという点において、今回の改正は実務家に対する静かな問いかけでもある。

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