ご相談事例
2023年12月24日 日曜日
相続放棄と遺産分割
借金などの負債を相続したい時、家庭裁判所に申述書を提出して相続放棄をします。
注意点は、
1.家庭裁判所で相続放棄をすると、相続人の権利を失い、負債だけでなく預金や不動産など全ての遺産を放棄することになります。
2.相続放棄は、相続の開始を知ってから3ケ月以内にする必要があります。相続の開始を知った時とは、①被相続人が亡くなったこと②自分が相続人であること、①②の両方を知った時です。
3.遺産分割(相続人全員での協議)でも遺産を放棄できますが、負債は放棄できません。遺産分割で放棄してしまうと、その後に家庭裁判所での放棄はできません。
4.相続放棄は、一度受理されると原則撤回はできません。
相続人がA氏とB氏でA氏が相続放棄をするケース、不動産の相続に際して遺産分割協議書(AとBが署名押印)を使って法務局で相続登記し、平行してAが家庭裁判所で相続放棄をしたいという方がいました。
遺産分割協議書を作成したことは家庭裁判所ではわかりません。なのでAの相続放棄は受理されてしまうでしょう。でも、遺産分割したことがどこかで知れたとき、Aは相続放棄の無効を主張される可能性があります(例えば被相続人の債権者などから)。
手続上にできてしまうことと、法的な有効・無効は別の問題なので注意が必要です。
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2023年12月12日 火曜日
相続人がA4一枚に:法定相続情報一覧図
法定相続情報証明制度は、相続手続きを簡素化するために2017年に導入された制度です。この制度の主な目的は、相続に伴う複雑な手続きを効率化し、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本など、重要な書類の繰り返し提出の手間を省くことにあります。
この制度を利用する際、まず必要な書類を収集します。具体的には、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍、被相続人の最後の住所を示す住民票の除票、そして相続人全員の現在戸籍が必要となります。また、申出人の身分を証明する公的書類、例えば運転免許証やマイナンバーカードのコピーも準備する必要があります。
次に、被相続人と相続人の関係を示す法定相続情報一覧図を作成します。この一覧図は、相続人の続柄や相続財産の分配を明確にするために重要です。作成した一覧図と必要書類を添えて、申出書を管轄の法務局に提出します。この申出書は、法務局の公式ウェブサイトからダウンロード可能です。
なお、相続放棄をした相続人がいる場合、これを一覧図に反映することはできません。第一順位の子供全員が相続放棄をした場合、これを前提として第二順位の両親を相続人とする一覧図は作成できません。
また外国籍の相続人がいる場合も一覧図は作成できません。
この制度のメリットは大きく、相続手続きの簡素化により、必要な書類の提出が一度で済むようになるため、手間と時間を大幅に削減できます。さらに、申請から5年以内であれば、一覧図の再交付を受けることが可能で、追加の手数料も発生しません。
制度の開始当初はどの程度利用されるものか疑問がありましたが、作ってみると便利なもので何通もの戸籍がA4一枚にまとまり様々な相続手続がスムーズに進みます。ぜひご利用ください。
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2023年12月8日 金曜日
行方不明の共有者:所在等不明共有者の不動産の持分の取得
行方不明になった共有者が持っている土地やビルの持分をどうするか、という問題を解決するための法改正がありました。新法では共有者は裁判所の決定を経て、行方不明の共有者が持っていた不動産の持分を取得できます(改正民法262の2)。なお遺産の共有の場合には、相続開始から10年経たないと、この方法は使えません。
申立てをするには、まず証拠を提出し、時価相当額の金銭を供託し、裁判で持分の取得を求めます。行方不明者については、申立人が登記簿や住民票などで必要な調査をして、裁判所がその人の所在が不明であると認める必要があります。
他の共有者については、申立人以外でも、所定の期間内であれば、別途持分取得の裁判を申し立てることができます。もし申立人が複数いる場合は、各申立人が持分割合に応じて、行方不明者の持分を按分して取得することになります。
持分の取得時期に関しては、申立人が裁判の確定時に持分を取得します。これに関しては、3か月以上の異議届出期間を経過する必要があります。
行方不明の共有者は、その持分を取得した共有者に対して時価相当額を請求できます。これは実際には供託金から支払われ、もし差額がある場合には、別途訴訟を起こして請求することもできます。
所在不明者や申立人以外の共有者が異議を申し立てることも可能です。もし所在不明者が異議を申し立てて所在が判明した場合、裁判の申立ては却下されます。また、異議届出期間が満了する前に共有物分割の訴えが提起され、異議の届出があれば、その訴訟が優先され、持分取得の裁判の申立ては却下されます。
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2023年12月7日 木曜日
法人設立(法人成り)のメリット・デメリット
- 時々ご相談のある法人設立のメリット・デメリットについて、一般的に言われることを上げます。
- 【メリット】
- ①税金の面での利点
- ・法人税の税率は、しばしば個人所得税の最高税率よりも低く設定されています。
- ・利益を再投資する際、法人化によって節税効果が期待できます。
- ・ 法人は経費として認められる項目が多いため、税負担の軽減が見込めます。
- ②信用力の向上
- ・法人は安定性や信頼性が高いと見なされることが多く、金融機関からの融資が得やすくなります。
- ・取引先からの信用も高まり、大規模な取引や長期契約を結びやすくなります。
- ③リスクの分離
- ・法人は個人とは別の法的実体であり、事業の負債は原則として法人に帰属します。
- ・個人の財産は、法人の負債から保護されるため、個人のリスクが軽減されます。
- ④後継計画の容易さ
- ・法人は個人に依存せずに存在し続けるため、経営者が変わっても事業を継続しやすいです。
- ・事業の後継者への移行がスムーズに行え、継続的な成長が期待できます。
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- 【デメリット】
- ①設立・運営コスト
- ・法人設立には登記費用、公証人費用などの初期費用が発生します。
- ・会計処理は複雑で、専門家の雇用や会計ソフトの利用が必要になることがあります。
- ②公開性の高まり
- ・法人は定期的に財務諸表を作成し、場合によっては公開する必要があります。
- ・企業の業績や経営状況が公になることで、競合他社に情報が露見するリスクもあります。
- ③税務上の厳格さ
- ・法人は個人事業主に比べて税務監査のリスクが高く、適切な会計記録の維持が重要です。
- ・不適切な税務処理が行われた場合、罰金や追徴税のリスクがあります。
- ④役員報酬の問題
- ・法人化すると、経営者の収入は役員報酬として扱われ、個人事業主時代と異なる税務処理が必要です。
- ・役員報酬の設定には制限がある場合があり、個人事業主時の収入管理の柔軟性が失われることがあります。
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- 私も司法書士を個人事業として起業し、10年目で法人化をしました。信用力が高まったという印象はあります。
- また個人と法人を切り分けられていなかったようなものが整理ができたことがとてもよかったです。一方で、初期コストがかかったこと、税務・労務などの手間が増えたことにストレスを感じることはありました。
- 本業で起業される方は最初から法人化した方が信用も作れるしストレスも少ないかもしれません(最初から「そういうものだ」と思えるから)。
- 一方で、副業で法人化を検討されている方は、ある程度事業が安定して道すじができてから法人化することをお奨めします。
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2023年12月6日 水曜日
“自筆証書遺言書保管制度:安心と円滑な相続のための重要なステップ”
2020年から自筆で作成した遺言書の保管を法務局が行う「自筆証書遺言書保管制度」が導入されています。この制度は、遺言書の紛失、消失、改ざん、隠匿のリスクを減少させることを目的としており、遺言者の死後、法務局が相続人に遺言書の保管を通知することで、円滑な相続を促進します。
**遺言者の手続き**
遺言者は、自筆で作成した遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けることができます。この際、遺言書の保管申請を行い、後に必要に応じて遺言書の閲覧や返還を請求することが可能です。
**相続人の手続き**
相続人や受遺者、遺言執行者などは、遺言書保管所に対して遺言書の閲覧を請求することができます。これにより、遺言書の内容を確認し、相続手続きを進めることが可能になります。
**保管制度のメリット**
この制度の最大のメリットは、家庭裁判所による遺言書の検認が不要になることです。これにより、相続手続きの簡略化と迅速化が図られ、遺言書に関する法的な安全性が高まります。
**手数料について**
遺言書の保管申請には、1件(遺言書1通)につき3900円の手数料が必要です。また、保管された遺言書の閲覧を請求する際には、モニターでの閲覧が1回につき1400円、原本の閲覧が1回につき1700円の手数料がかかります。これらの手数料は遺言者や関連する相続人に適用されます。
**まとめ**
遺言書保管制度は、遺言書に関するリスクを減少させ、相続手続きをスムーズに行うための重要な仕組みです。自筆証書遺言の作成と保管について、遺言者自身も関係者も、この制度を活用することで、相続におけるトラブルの予防と円満な解決を図ることができます。
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2023年12月5日 火曜日
“土地所有の複雑化と相続法改正:日本の人口減少と土地問題の将来”
以前の朝日新聞デジタルの記事ですが「未登記で27年、土地所有者が10倍超の395人に 国東市が提訴へ」という記事が掲載されていました。
内容としては、大分県国東市が、27年前に温泉宿泊施設の建設のために買い取った土地の登記をせずにいたところ、登記簿上35人だった土地所有者が相続で395人に膨れ上がり、問題の解決のために民事訴訟を起こすというものです。前所有者は山林共有組合で、組合員の共有名義で登記されていたため、元々の所有者も多かったのですが、27年で所有者は約10倍に膨れ上がりました。
「所有者不明土地」の問題、現在、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタールの面積を占めると推計されています。これは九州本土を大きく上回る面積で、2040年には国土の2割、北海道本島の面積に迫るとの試算もあります。
この課題に対する改正民法が順次施行されています。①所有者不明土地に特化した財産管理制度を創設すること。裁判所が選任した管財人が所有者不明土地を売却したり(裁判所の許可が必要)、管理することができます。②共有地の一部の共有者が不明の場合に、裁判所の関与の下で、残りの共有者の同意で共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設すること。また、不明な共有者の持分の価額に相当する金銭を供託して、不明な共有者の共有持分を残りの共有者が取得する仕組みを創設します。③ライフライン(水道、ガス、電気等)を自己の土地に引き込むための設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣地所有者の不明状態にも対応できる仕組みも整備すること。などがあります。
また、予防策としての「相続登記の義務化」も令和6年4月に始まります。不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付けることとしました。正当な理由なく申請がない場合には10万円以下の過料の罰則があります。
これらの改正によって、所有者不明土地に対する意識も変わると思います。ただし、この改正民法により所有者が明確となっても、その土地を利活用されなければ根本的な問題解決にはならないでしょう。
日本の人口は2004年12月の1億2,784万人をピークに減少し、2100年には4,700万人程になると予測されています。また、2050年の世帯数の予測では、約4割が単身世帯となり、その半分は高齢者の単身世帯となります。これまで主流だった「夫婦と子」という世帯は、全体の18%程となります。これらはいずれも総務省が公表しているデータです。この人口減少が日本の根本的な問題にあり、この状況では土地の利用もこれまでとは大きく異なるはずです。
世界的にも人口減少は始まっており、この流れは止まることがないでしょう。今の子どもたちが社会の中心となっている頃には、今までとは大きく違う景色が見えていると思います。これまでの価値観を捨て去って行動しないと、子どもたちの未来は描けないでしょう。
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2023年12月4日 月曜日
“高齢化と株式会社の未来:行方不明株主と廃業・解散の課題”
「少数株主から株式を買い取りたいが行方不明の人がいる。どうしたら良いか」という相談がありました。相談者は株式会社の創業者オーナーで、高齢のため引退したいと考えていますが、後継者がいないため、会社を売るか廃業するかを検討していました。過去に従業員に会社の株を与えていたこともあり、株が分散していました。行方不明の株主は、何十年も前に退職した従業員で、存命か否かもわからない状況です。
行方不明の株主がいる状況でのM&Aは、買い取る側としては好ましくないでしょう。そのまま廃業して解散しても、残った財産は株主への配当(残余財産の分配)となりますので、行方不明の株主への配当金は供託され、恐らく長く眠ることになるでしょう。
株式の譲渡などにより株主が変わった場合、新しい株主は会社に株主名簿の書換を請求する必要があります。株主は、株主名簿に自分の名前が記載されていないと、自分が株主であることを会社に主張することができません。よって、株主の行方不明などにより株主総会の招集通知が届かなかったとしても、株式会社は株主名簿の株主を自社の株主として扱えば良いので、通常の業務・運営に影響はありません。
ただし、株式を買い取るとなると、実際の株主を把握しないと買い取ることはできません。平成2年の商法改正までは、会社設立時に発起人が7名以上必要だったことから、今でも名義株や株式の分散の問題は残っていますが、その解決策として、①所在不明株主の株式の競売、②特別支配株主の株式等売渡請求、③株式併合の3つの方法があります。
①は、所在がわからない株主の株式を競売にかけることができます。ただし、その株主への通知が5年以上到着していない必要があります。株主総会を毎年開催している会社であれば、この前提が起きうる可能性がありますが、中小企業の多くは株主総会を開催していないので、この方法は難しいでしょう。
②は、総株数の90%以上を持つ株主が少数株主に売渡を請求できますが、請求するには単独で90%以上を持っている必要があります。経験則で言うと、100%持っている株主は多く見られますが、単独90%というケースはあまりないようです。株主総会の特別決議が3分の2以上の賛成であり、3分の2が1つのラインとしてあるためかもしれません。
③は、株式を併合(10株を1株に併合など)によって、少数株主を1株未満の株主にすることができます。1株未満となった株式は任意売却か競売で処理されます。ただし、全ての株式が同率で併合されるため、全体のバランスを見る必要があります。
東京商工リサーチによれば、2020年に全国で休廃業・解散した企業は4万9,698件(前年比14.6%増)で、2000年に調査を開始して以来最多を記録しました。休廃業・解散した企業の代表者の年齢別では70代が最も多く41.7%を占めていました。
この数年、解散登記の依頼が増えていますが、今後複雑な廃業・解散が増える可能性があると感じた一件でした。
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2023年12月3日 日曜日
“戸籍法改正と読み仮名登録:名前のデジタル化への一歩”
今年2月、法制審議会は戸籍上の氏名に「読み仮名」をつける戸籍法改正の要綱案をまとめました。現在の戸籍法では、氏名に使用する漢字、ひらがな、カタカナなどの字についての制限はありますが、「読み方」については定められていません。
1993年に父親が長男に「悪魔(あくま)」という名前をつけた出生届を出した際に裁判となった事例がありますが、読み仮名に法律上の制限はないのです。
読み仮名の登録は過去にも検討されましたが、漢字の読み方にそぐわない読み仮名を付けた場合の処理で多くの実務上の問題が予想され、見送られてきました。しかし、今回はマイナンバーカードの普及など行政手続きのデジタル化の中で、読み仮名を活用することでシステム処理の正確性・迅速性・効率性を向上させることができるという理由から実現されようとしています。
読み方として認められるか否かについては、今後更に検討され、法務省が通達で示します。法務省によると、「アクマ」など反社会的な印象を与える読みは採用されない可能性が高いです。また、「高」を「ヒクシ」とするような漢字の意味と逆にする読み方や、「太郎」を「ジロウ」とするなど漢字から連想できない読み方は認められない見込みです。
一方で、「大空」を「スカイ」、「愛」を「ヒカリ」と読むなど漢字と関連する外国語や意味から連想される読み方は認める方向のようです。「キラキラネーム」に関しては、法務省は「社会的に通用し、漢字のイメージに沿った読みであると説明できれば基本的には戸籍に登録できる方向」としています。
私は息子の名前を決める際に姓名鑑定をしました。姓名鑑定には「五大真理」というものがあり、重要な五つの要素が定められています。そこで最も重要とされているのは「読み下し(読み方)」です。
例えば、佐々木という姓に「けんじ」という名をつけると「ささきけんじ」となりますが、氏名に「きけんじ(危険児)」という音が含まれていることから、推奨されません。姓名鑑定では、まず読み方・音が重要視されます。ちなみに氏名の画数は五つの要素の中で1割程度の影響しかありません。
戸籍法が改正されれば、読み仮名が登録されることになりますが、同時に読み仮名がデジタルデータとしても取り込まれることになります。
これからの社会ではAIが広い分野で活用され、AIの回答が人間の意思決定に大きな影響を与えることが見込まれます。やはりAIが判断に迷わないような命名が良いのではないかと私は思います。
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2023年12月3日 日曜日
いらない土地を国に引き取ってもらうには【相続土地国庫帰属制度】
土地を相続したけど、使わない、いらない、どうしようという問題。時々相談があります。
原野商法がらみが多いですが、先代から受け継いだ田畑や山林なども。
これまでは「どうしようもないんですよね…」と答えてましたが、今年4月に「相続土地国庫帰属制度」というのが始まりました。
ざっくり言うと、相続したいらない土地を国に引き取ってもらう制度です。
ただ、何でも引き取ってもらえるかというとそうではなく、建物があるとダメ、隣地との境目がわからないとダメなど要件があります。
あと相続した土地はいいけど、買った土地はダメ。
国に納める手数料は最低でも22万円程かかります。
法務局の話によると今年10月末現在で、
相談件数 18,073件
申請件数 1,181件
国に帰属した土地 9件
だそうです。
手続き期間は原則8ヶ月間なので、年明けには帰属した土地がもう少し増えてるかもしれません。
始まったばかりの制度ということと、結構これまでの常識を覆すような制度なので法務局もまだ手探りだし、わかってる専門家も少ないです。
この制度、難しそうというのが第一印象だったけど、これまでの常識を覆す制度だなと気づいたらちょっと面白いなと思いました。何かが変わる瞬間は楽しいですね。
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2023年12月3日 日曜日
相続登記が義務化されます。
令和6年4月から、相続登記が義務化されることになります。
先日、そのことをSNSに投稿したところ、「これまで義務ではなかったのですね」というコメントがありました。私は「義務ではないため、登記が放置され、所有者がわからない土地が九州ほどの広さになっています」と返信しましたら、相手は驚かれていました。
法務省もPRに力を入れており、週刊誌や雑誌の記事にもよく掲載されていますが、まだ知らない方は多いです。義務化されることを知らないのではなく、義務ではなかったことを知らないというのは、こちらとしては苦々しいですが、相続は人生に何度もあるイベントではないので、当然だと思います。
近年、所有者不明の土地問題を解決し、未来の土地管理を改善するために相続法が改正されています。この改正の中心には、相続登記の義務化と相続土地国庫帰属制度の導入があります。
相続登記の義務化は令和6年4月1日に施行され、相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました。
また、相続土地国庫帰属制度は令和5年4月27日に施行され、この制度により、土地の所有権を取得した相続人は、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となりました。国庫に帰属された土地は国が管理・処分することになっています。
繰り返しますが、日本では所有者不明の土地が増加しています。これは、長らく相続登記が放置されてきたことが一因です。さらに、日本の人口減少と過疎化の進行が、土地の管理を一層困難にしています。特に過疎地では、土地の価値が低下し、それに伴い放置された土地や不動産が増加しています。
このような背景のもとで、相続未登記の農地等に関する実態調査が行われました。調査の結果、令和3年には全国で登記名義人が死亡している農地の面積は約52万ヘクタール、相続未登記のおそれのある農地の面積は約50万9千ヘクタールであることが明らかになっています。
日本の死亡数は、2010年が約120万人、2020年が約137万人でしたが、今後も増加が続き2040年には約160万人になる見込みです。この制度がどこまで効果を発揮するかは未知数ですが、死亡者が増加するこれからの社会を考えると、まずは知ってもらうことが大切です。
評価額が100万円以下の土地は登録免許税がかからないなど、他にも相続登記を促す措置がされていますので、不要と思われる不動産でも放置せずに登記することをお勧めします。
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