2026年9月7日 月曜日
「正確に、早く、大量に」は、これからも価値なのか
先日、AIエージェントの研修を受けた。AIに指示を出すと、まるで会社の中に複数の担当者がいるように役割を分け、仕事を進めていく。新しく事業を始める人にとっては、かなり画期的な道具だと思った。一人で起業しても、企画、調査、資料作成、発信などをAIに任せながら、小さな組織のようなものを作ることができる。
一方で、司法書士という今の仕事へのAI活用については、私はそれほど大きな衝撃を受けなかった。もちろんAIは便利だし、今後さらに使う場面は増える。ただ、司法書士として25年以上仕事をしてきた中で、私はもともと「正確に、早く、大量に」という方向とは少し違うことを考えてきた。
司法書士の仕事は、一般の人には分かりにくい法律や手続きを、正確に、早く処理することに価値がある。ただ、司法書士は一定の試験を通った専門職なので、正確さや知識だけで同業と大きな差をつけるのは難しい。すると売上を増やすには、単価を上げるか、件数を増やすかという話になりやすい。
そこで多くの事務所は、人を雇い、分業し、より多くの案件を処理できる仕組みを作ってきた。これは合理的な経営だと思う。しかし今、その「正確に、早く、大量に」という部分を、AIが人間より安く、しかも高い精度でできるようになりつつある。だから「正確に、早く、大量に」を追求してきた事務所ほど、AIによる効率化の効果は大きく、同時に大きな変化にも直面することになる。
AIを使えば、もっと正確に、早く、大量に仕事ができる。だが、本当に考えるべきなのはそこだろうか。『正確に、早く、大量に』を競争力の中心に置いている限り、その競争ではいずれAIに勝てなくなる。
私は逆に、できるだけ大量に仕事をしなくて済む方法を考えてきた。紹介された仕事を処理するだけではなく、なるべくお客様の課題の入口に立ち、何に困っているのかを一緒に整理する。そこに価値を作ることで、件数を増やさなくても成り立つ仕事の形を目指してきた。
AIやロボットが人間より低コストになる時代は、思っているより早く来るかもしれない。その時になって突然、「では人間は何をするのか」と考えても、価値観や仕事の仕方は簡単には変わらない。仮にその日が明日だと考えたら、想像がつくと思う。
だから今のうちから、小さく試してみることが大切なのだと思う。私は最近、AIを使って自分の顔や娘の描いた猫の絵からLINEスタンプを作ってみた。大した事業ではないが、これまで自分ではできなかったこと。自分で作り、市場に出してみると、AIができることと、人間が決めることの境界が少しだけ見えてくる。
AIをどう使うかという話より先に、「自分たちは何で価値を生む会社なのか」を考える。これからの経営では、その問いの方が重要になっていくのだと思う。
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